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A. 中東の知財概況と模倣品対策

JETROドバイ事務所後藤 泰輔氏が中東地域、主にUAEの知的財産権と模倣品対策について説明を行った。主な内容は以下の通り(プレゼン資料はこちら):

  1. 中東地域の特許・商標出願は増加傾向にあり、特にUAEとサウジアラビアで顕著である。

  2. 中東は模倣品の流通経路(中国から中東を経由して欧州、アフリカへ)となっているが、最近はその流れが変化しつつある。

  3. 課題は、低所得層による模倣品の需要、税関差止の実効性の不透明性、証拠収集の困難さ(特にフリーゾーン内)。

  4. UAEでは税関への商標登録が重要で、これにより税関の積極的な取り締まりが期待できる。

  5. 市場での取り締まりには行政手続きと刑事手続きの2つの方法がある。

  6. ジェトロドバイは日本企業と連携し中東IPGとして活動。IIPPF中東アフリカPJとの連携, ガルフBPG(Brand Protection Group)とも連携し, 当局との関係強化のため当局への真贋判定セミナー(ドバイ税関, アブダビDED. カタールMOCI, ヨルダン税関, サウジSAIP等)や当局との意見交換を行っている。 後藤氏は、中東地域の知財保護は改善傾向にあるものの、引き続き当局と協力した取り組みを続けていくことの重要性を指摘した。

 

B. 欧州知財庁における模倣品に関する 調査報告とキャンペーン

JETROデュッセルドルフ事務所吉森晃氏が、ヨーロッパの知財権保護及び模倣品の問題の調査報告等について報告を行った(資料はこちら)。

  1. 欧州での模倣品対策に関する以下の主要なポイント:

    • 税関等が押収した知財権侵害物品は、1億5000万点(2023年)。前年比77%増加した。押収品の推定金額は34.4億ユーロ。毎年、一斉摘発のキャンペーンをやっており、特に2023年に大量の模倣品が押収されたことが増加の要因。

    • 中国と香港が主な模倣品の原産地となっている。

    • 輸送手段(件数)では、郵便やエクスプレス貨物が大多数を占める.

    • 摘発物品は、ゲーム、玩具、録音CD/DVD

    • 域内では、13800万点、27億ユーロ

    • 使われた権利(価格別) 商標69.4%、著作権30.8%、意匠3.5% ➢ 留置報告数(価格別) イタリア80.1%、フランス7.4%、ルーマニア4.0%、スペイン2.8%

  2. 英国の模倣品に対する意識

    • 若者ほど模倣品に対して寛容な傾向がある。18-34歳の約3割が模倣品を購入している。

    • 模倣品に対する不安を語るキャンペーンが効果的との結果

  3. 第三国の知財権の保護と執行

    • 知財の保護と執行の状況が大きな懸念となっている国として、EUの優先度1は中国、優先度2は、インドとトルコ。優先度3は、アルゼンチン、ブラジル 、エクアドル、インドネシア、マレーシア、ナイジェリア、サウジアラビア、タイ。

  4. 欧州の模倣品に対する意識

    • 8割が模倣品の背後の犯罪組織の存在や、購入が悪影響を及ぼすことを認識

    • 過去1年に13%が模倣品を購入した経験あり。

    • 3人に1人は、正規品が高すぎると模倣品を購入すると回答。

  5. 模倣品・海賊版対策技術

    • EUIPOがガイドを発表。各技術の詳細な説明、実装に関する実践的なアドバイス、 いくつかの実例が含まれている。さらに、製品タイプ(物理的かデジタルか)や技術の使 用方法など、いくつかの条件で絞り込める検索機能も備えている。

  6. 刑事措置

    • 架空シナリオに基づき、EU27か国でどのようなペナルティがあるかを公表

    • 知的財産犯罪のエコシステムについても解明し公表

  7. 結論

    • 模倣品対策には一つ一つ対応していく必要があり、企業は発見次第対処することが重要である。 企業としては、価格設定の見直しや消費者教育などと並行して、模倣品の発見・対処を継続的に行うことが求められる状況にあります。

 

C. 強力な商標権保全:ドイツ・EUにおける暫定的な救済措置

  1. クンケル氏は、ドイツ又はEUの商標権侵害に対する暫定的救済措置(仮処分)が、即効性をもち、大切である点を指摘します。こちらは、本案の事件提起前に裁判所に対して申立てを行うことで開始される手続です。

  2. 暫定的措置の申請にあたっては、商標権侵害等に基づいた法的請求があるのに加え、緊急性の要件があります。緊急性の期限は、侵害を認識してから申立てを行うまでの期間を指し、地域によって1〜2ヶ月と異なります。

  3. また、ドイツの裁判所の管轄権についても解説しており、侵害地がドイツにある場合、それを基にドイツで訴訟を起こせるのに加え、EU商標の場合、ドイツ裁判所がEU全域に効力を持つ暫定的措置を出せる場合と、ドイツ国内のみに限定される場合があると説明しています。

  4. 暫定的措置の流れとプロセス: クンケル氏は、裁判所における暫定的措置手続きの流れについて説明します。裁判所は申請を評価し、即時に暫定的措置を発行するか、被告に応答を求めるか、口頭弁論を行うかを決定します。暫定的措置が発行された後、原告は被告に暫定的措置を送達する必要があります。敗訴側は決定に異議を唱えることができます。暫定的措置手続きでは、主張の立証基準が低く、宣誓供述書が重要な証拠となります。クンケル氏は最後に、暫定的措置後の「終結手続き」について説明し、被告が暫定的措置を最終的な解決として受け入れる「終結声明」を提出することで、本案訴訟を回避できると述べています。

  5. ドイツ商標法執行概要: クンケル氏は、ドイツにおける商標権の執行と差止手続きについて概要を説明した後、参加者からの質問に答えています。彼は、仮差止命令の取得に関する費用が係争金額に応じて決まることを説明しています。また、被告が不正確な情報を提供した場合、最大万ユーロの罰金が科される可能性があることも述べています。クンケル氏は被告に万〜万ユーロの罰金が科された事例を我々と共有します。

  6. クンケル氏の発表のスライドはこちらになります。

Interim Injunction in EU Germany
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